2016年  

『春日大社の甲冑と刀剣』

  

発行: 春日大社国宝殿

制作:玄元舎

印刷: サンエムカラー

装幀:井上二三夫

 

おもて表紙

 


春日大社国宝殿の開館記念として開催されている展覧会「春日大社の国宝ー千年の秘宝と珠玉の甲冑刀剣を一堂にー」にあわせて、『春日大社の甲冑と刀剣』図録を制作させていただいた。

 

蔵品図録シリーズの4冊目(『春日舞楽の名宝』 『春日大社 神々の秘宝』 『春日権現験記』)

これで春日大社の神宝、宝物類がほぼ網羅されたことになる。

 

春日大社ご所蔵の甲冑と刀剣が名品揃いであることは、よく知られている。

古式の甲冑である大鎧といって真っ先にあげられるのは、春日の赤糸威大鎧(あかいとおどしおおよろい)2領であるし、古式の刀剣である飾太刀や毛抜形太刀の名品のほとんどが春日大社のご所蔵である。これらを中心に、所蔵の武器・武具の名品80数点が掲載されている。

うら表紙


とくに大鎧のディテール写真は見応えがある。

大鎧は何度も拝見してきたが、アップにするとここまですごいなんてことは、全く気づいていなかった。甲冑や刀剣のぱっと見の美しさは誰にでもわかるけれども、さてどこが見所かなどという話になると、用語が難しくて初心者にはとっつきにくいものだ。

 

図録の巻末には、甲冑刀剣各部位の名称が図示されているページがあり、これを参考にしながら解説を読んでゆくと、だんだんわかってくる(ような気になる)。

 

コラムも充実していて、大鎧と胴丸の違い、太刀と刀と剣の違いといった基礎的なことから、平安・鎌倉時代に武器・武具がどのように使われていたかも『春日権現験記』絵巻の使って図示してあるので、よく理解できる。

国宝 赤糸威大鎧(梅鶯かざり)兜・大袖付

鎌倉時代(十三世紀)


 

印刷では、宝物の細部がよくわかるように網点のない高精細印刷技法を使った。

掲載されている宝物のほとんどは以前に拝見したことがあるもので、そのうちいくつかは撮影もさせていただいた。だから、ある程度現物の色調は記憶に残っていた。

できるだけ原本に近い印刷再現をと思い、主任学芸員の松村和歌子さん,、刀剣甲冑がご専門の荒井清志権禰宜のアドバイスをいただきながら、製版・印刷のオペレーターに繰り返し調整をお願いしてできあがった。