ワコールの支援で設立された京都服飾文化研究財団(KCI)から刊行された研究誌、「Fashion Talks...」VOL. 1の印刷を担当させていただいた。

デザインは、西岡勉氏。第1号の特集はやはり下着でスタートした。


KCIさんは、18世紀から現在に至るまでの貴重な下着や下着を描いた口絵の入った本をたくさん収蔵されていて、何度か国立近代美術館でも展覧会を開催されている。

メインページの収蔵品紹介のコーナーでは、18世紀後半から20世紀初頭までの下着や本の口絵を、風合いのある紙に原物や原本に忠実に、しかも表現力のある印刷をと要求された。

論文のカラー挿図にしても細かい注文が入る。


必死になって画像を読み込んで製版指示を出し、印刷も本機校正から立ち会ってまとめていったが、さすがに西岡氏、着目点が違う。私が読み切れていない欠点を確実に指摘される。いつもながら勉強になる。


 

裏表紙

写真家「宮下マキさん」の写真集『部屋と下着』から、表紙の写真が使われています。


校正の折には、掲載している貴重な図書の原本を直に拝見し、色調を整えたが、その本の紙は見たこともない手漉きの洋紙だった。

その紙についてお聞きすると、ヨーロッパでは東アジアで紙漉に使われる植物が栽培されていなかったため、中国から製紙法が伝わった以降も、19世紀後半までは着古したリネンの下着が紙の原料になっていたということを教えていただいた。

日本でも、正倉院文書に使われている奈良時代の麻紙は、栽培された麻の繊維を原料として漉かれたものではなく,着古した麻の衣服を使って漉かれたものらしいということを耳にしたことがある。紙を漉くには繊維を十分にほぐす必要があるが、それには着古した衣服が一番適している。

洋の東西を問わず、人間の考えることは同じだ。またいろんなことを勉強させていただいた。


サンエムカラーのスタッフとしての仕事である。