坂本の里坊庭園

「宝積院」の庭
「宝積院」の庭

修学院は比叡山の西の麓、坂本の町は反対側の東側の麓、町の名が示すよう坂の町です。麓の日吉大社にむかってのメインの道「日吉馬場」から横にそれると、比叡山からの水の流れと威厳のある石積みに、ほっこり癒される空間です。

ここで連休の5月1日から5日まで里坊の特別公開があると聞き、あわてて行ってきました。

里坊とは「比叡山上の山坊に対して麓の坊という意味で、近世に登場する。山上で修行した老僧が、余生を里坊でおくったことから、生活の場としての工夫がこらされ、すばらしい庭園がつくられた。」(大津市歴史博物館《大津の歴史辞典》より)

50余りの里坊がある中、毎年この時期だけ数ケ所が特別公開されているとのこと、今まで知らなかった事が悔やまれます。

まず向かったのは「宝積院」、それは見事な築山と石組みの池泉式庭園です。奥様が丁寧に説明をしてくださいました。なんと重森三玲が昭和初期に調査・復元したお庭だそうで、こんなところから東福寺や松尾大社のお庭は生まれてきたのだと、なんとなく納得、感動でした。

里坊の回りの風景も昔と変り、バックの建築物を隠そうと杉を植えたら大きくなりすぎて、切ったら、建物が丸見えで無粋に感じられて‥と、物を人の思いと共に維持するのは大変な事ですね。

なんとか維持したいと話される奥様の言葉に、無責任に「がんばってください」ということもできず、ただ、ゆっくりと畳に座り庭を眺めるのみ、でした。

「慈光院」の門
「慈光院」の門

次に向かった里坊は「慈光院」

ここは門に到着して小躍りしてしまいました。今まで「西教寺」に行く途中いつも見ていた、この左手に美しい石垣と階段、その奥に静かに閉じられた門と、時には青もみじ、時にはは紅葉、本当にあこがれの僧坊だったのです。

 

「慈光院」の庭
「慈光院」の庭

坊内にに入り、やはり予想は裏切られなかったと、ほっとしました。お庭に入るくぐり戸も、お庭を眺めるお部屋も、華美を排除し質素な中に凛とした落ち着きがあります。

極めつけはこのお庭。写真に写る池を中心としたけっして広くはない庭ですが、水面と植え込みと石とが作り出す包まれるような空間と、借景にひろがる琵琶湖の水面の広がりが、本当に美しいと思いました。

坂本の町を歩くと心が惹かれるものにたくさん出会えます。

来年はどの里坊が公開されるのか楽しみでたまりません。

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コメント: 2
  • #1

    若槻真治 (月曜日, 23 5月 2011 00:46)

    いいですねえ。ちゃんとあるんですね。こういう風情を残すことは大変なことで、モノの維持管理はもちろんだけど、結局のところ残そうとしておられるのは価値とか精神とかっていうもので、手間のかかる割に実にあやふやなものですからね。私どもが暮らしている田舎になると、自然はたくさん残っていますが、放置された森林や耕作地が増える一方で、ちょっとワイルドすぎて、あちこちで、衰滅の美を通り越して確実に滅んだなあ、って気になります。当たり前のことですが「手入れ」をすることがいかに大変で大事かってことですよね。でも5月の新緑はこちらでもおおっというほどきれいです。(どうでもいいことですが「里坊」は日本書紀にもあります。別の意味で。K氏もよく知っている大先生専門の「大化改新詔」のなかにでてきます)Cooさんおめでとう

  • #2

    gengensha (月曜日, 23 5月 2011 22:37)

    ありがとうございます。「結局のところ残そうとしておられるのは価値とか精神とかっていうもので、手間のかかる割に実にあやふやなものですからね。」‥こんな風に言葉で言っていただくとハッとしますねえ。坂本には旧里坊として観光地として有料化することで広大な庭園を維持しておられるところもありました。たまに訪れる私たちは生活を超えた「侘び寂び」を求めますけれど、そこに暮らす人にとっては、そこが生活の場である訳ですから、ますます難しいですね。(E)