2018年 『百の手すさび 近代の茶杓と数寄者往来』

   

  発行:     株式会社 淡交社

  企画・編集:MIHO MUSEUM

  装丁・レイアウト 大西未生(ザイン)

  印刷:   株式会社サンエムカラー

  

  サイズ:  A4 

  総貢:   400貢 

  平成30年11月9日発売

  定価:本体2778円+消費税

 

淡交社さんから出版された『百の手すさびー近代の茶杓と数寄者往来』の印刷を担当させていただいた。サンエムカラーのスタッフとしての仕事である。

2018年10月から12月にかけてMIHO MUSEUMで開催された展覧会の図録として作られたもので、会場販売用と書店販売用とでは、表紙とカバーとに微妙な違いがある。
この展覧会は、近代の数寄者と呼ばれる、趣味として茶の湯を行うお茶人たちが作った茶杓が中心となっている。
明治中期に財界人たちの間に日本美術を蒐集する動きが起こり、それが茶道具に及んで、それらを用いて独創的な茶の湯を行ったことは有名であるが、彼らはその際に自作の茶杓を作り、自らの茶会で使ったり、友人たちに贈ったりしていた。

 

 

当然、全て自分で一から作るのではなく、専門の下削り職人にイメージを伝え、竹を捜させてある程度の下削りをしてもらった上で、最後のフィニッシュを行い、茶杓を入れる筒に銘と署名を書き入れ完成させたものである。

 

それぞれの数寄者たちが、思い思いに個性的な茶杓を削っているが、その茶杓が面白い。

 

馬鹿でかいもの、くせのある形のもの、瑕疵の有る素材を使ってそれに銘をつけて楽しんでいるものなど、ここから数寄者の個性が窺える。いわば、茶杓を通してその数寄者の茶を見ようとする企画なのである。

また、日本画や陶芸などの作家の削ったものを取り上げられているが、その作品には一から自分で作り上げたものがあり、本来の絵や陶器の作風と同じ好みで作られていて楽しい。
展覧会に行けなかった方も、ぜひこの本を手に取って見ていただきたいと思う。
図版には、茶杓の正面、背面、側面と筒が原寸で掲載されている。
だから、本当に茶杓を手に取って見ているようにレイアウトされている。その分、印刷では作品に極力色調が近づくよう修整を行った。
用紙は落ち着いた刷り上がりになるマット紙を使ったので、竹のような茶系の色相は色が狂いやすい。膨大な図版点数となったが、全ての作品をご覧になって、色目を記憶されている監修の池田瓢阿先生に1点ずつ色調や素材をお聞きしつつ、色指示を出してなんとか取りまとめた。

 

 

表紙は、茶杓を集大成した高橋杓庵の著作『茶杓三百選』(全三巻)『茶杓拾遺集』の表紙の図柄を使っている。

 

茶杓集大成本の5冊目の意味が込められている。

 

MIHO MUSEUMの担当は、小山由貴子先生
淡交社の担当は河村尚子さん
デザインはザイン大西未生さん