【「桃源を尋ねる心地して、秋山に尋ね入るぬ」‥‥江戸時代後期、越後塩沢の文人鈴木牧之が著した『秋山紀行』の一節です‥‥】
という見返しの文章から始まる本書は、写真家の山本治之氏が現地に2年間暮らし、日本原風景を写し取った写真集です。
有数の豪雪地帯だけあって、雪に始まり、やはり、雪に終る写真集です。
その間に見せる雪の様々な表情‥厳つい雪山や雪に閉じ込められる集落、雪の中から芽吹く緑や氷が織り成す結晶の藝術‥息をのむ美しさです。
そして、雪と雪の間を謳歌するかのように写し出される季節‥
水と光、樹木の緑や山野草、時に現れる動物や昆虫‥見ていて、切ないような懐かしいような心持に襲われます。
「日本の原風景とも呼べる景観は、現代の私たちにとっての桃源郷といえるでしょう」
(「信越秋山郷」より)
氏の言葉はその写真とともに、私たちを桃源郷に導いてくれるようです。