「風土・歴史・歴史に培われた文化、これら三つの条件が三位一体となって、他所では見られない京都独自の花風景の美しさが醸し出されている。」と水野克比古氏は本書で述べている。
『京都さくら散歩』『京都もみじ散歩』に続く本書は、そんな京都の花の姿を見事に映し出している。
それは、雑誌などで取り上げられている有名な寺社や観光地とは限らない。
花も、名のある花だけではない。
野に咲く「紫雲英(れんげ)」や、寺社の庭の隅に咲く「猩々袴(しょうじょうばかま)」‥
ああ、京都にはこんな風景もあったのだ‥と古都の奥の深さが染み入って感じられます。
「咲き終った蓮は晩秋に長い茎の先に果托を残して折れ曲がり、すがれた枯葉を寒空にさらして、ガサガサと冷風に揺れている。一見無残と思える野晒しの風景だが、その造形の面白さと、栄華を誇った蓮の花の寂しい風景は感慨深い。」本紙『敗荷(やれはす)』の解説より
写真に添えられた水野氏の言葉も、長年レンズの向こうに花を見続けてきた深い思いが伝わり、はっとさせられるものがある。
本書を片手に京都を隅々まで歩いてみたくなる作品です。